変わり続けながら、変わらなかった男

10月3日、引退セレモニーより
石川雅規が引退を表明してから、ずっと彼のことを書かなければと思っていた。
でも、書けなかった。何を書けばいいのかわからなかったのだ。
自分でも不思議だった。僕はこの6年間、『週ベONLINE』で石川への密着連載を続けてきた。毎年、何度も話を聞き、その姿を追い、そのたびに文章を書いてきた。
なのに、最後の最後になって、言葉が出てこない。もしかしたら、その日が来ることを、ずっと前からわかっていたからなのかもしれない。
8月27日、神宮球場。石川の今季初登板の日だった。
試合前から思っていた。
(今日が、石川雅規の最後の登板になるのではないか……)
いや、「なるのではないか」ではない。僕は、ほとんど確信していた。今日が最後になるんだろう、と。そう思った理由は、やはり『週ベONLINE』の連載にある。6年間ずっと話を聞いてきた。その中で、今年の石川が語る言葉は明らかにこれまでとは違っていた。
一軍での登板機会はなかなか巡ってこなかった。ファームでの日々が続き、故障もあった。気がつけば8月だった。8月2日、戸田球場でインタビューをした。46歳の石川は、8月になっても一軍に上がれていない現実を口にした。「正直しんどい」と言った。それでも、「0.001%でもチャンスがあるならもがきたい」と言った。
一軍で投げたい。
勝ちたい。
心の炎は消えていない。
その言葉は、これまでの石川と何も変わらなかった。けれど、その一方で、それまであまり聞かなかった言葉も出てきた。
「辞める理由付けをしているのかもしれない」
「続ける理由を探しているのかもしれない」
そして、「とりあえず8月を目いっぱい頑張る」と言った。9月になってからでは、もし辞めるとしても遅いと思う、とも言った。
話を聞きながら、僕は思っていた。
(ああ、今年で終わるのかもしれないな……)
インタビューが終わり、編集者に促されて一緒に写真を撮った。
二人とも笑っている。
けれど僕は、心の中で思っていた。
(これが、現役の石川雅規と一緒に撮る最後の写真になるのかな……)
もちろん、本人には言わなかった。

別れ際に僕が「今度は神宮で」と言うと、石川は「そうですね。クラブハウスで対面で」と答えた。次があるように別れた。でも僕は、次はないかもしれないと思っていた。
そして25日後、8月27日がやってきた——。