気がつけば、盗塁王——最高だ、岩田!

そうか、もう29歳なんだ。ついに花開いて嬉しい!!
岩田幸宏選手が、盗塁王になりました。
2026年シーズン、39盗塁。昨年の14盗塁から、一気に数字を伸ばして初タイトルです。スワローズから盗塁王が生まれるのは、2018年の山田哲人選手以来、8年ぶり。しかも岩田選手は育成ドラフトで入団した選手です。育成出身選手がセ・リーグの打撃部門でタイトルを獲得するのは、これが史上初なのだそうです。
2021年の育成ドラフト1位でBC信濃から入団し、支配下登録を勝ち取ったのは2024年。決して華々しいスタートではなかった男が、ついにタイトルホルダーです。胸を張っていい。すごいよ、岩田。いやあ、嬉しいじゃないですか。
僕は今季のスワローズを振り返るとき、岩田の盗塁王を真っ先に挙げたいです。数字も記録も立派です。でも、それだけじゃない。岩田選手の活躍には、僕が昔から好きだった野球の面白さが詰まっています。
僕は、とにかく足の速い選手が大好きです。もちろん、ただ50メートルを何秒で走るかというタイムの話ではなく、その足で相手をかき回す選手が好きなのです。
一塁に出れば、ピッチャーがちらちらと気にする。キャッチャーもいくぶん中腰になる。内野手はベースカバーを意識し、ベンチからは警戒の声が飛ぶ。たった一人の走者のために、守る側が落ち着きをなくしていく。あの感じが、たまらなく好きです。
岩田選手が塁に出ると、まさにそんな空気になります。
何かが起こりそう。何かをやってくれそう。相手チームのファンまで、どこかソワソワしているように見えます。こちらは逆にワクワクする。盗塁しなくたって、もう十分に面白い。だから、岩田選手が一塁にいる場面では、つい目で追ってしまいます。あの数秒間だけは、打席に立つバッターよりも、塁上の岩田選手の方が、僕の視線を独り占めしてしまいます。
そんな彼にも、忘れられない失敗がありました。
2024年5月3日、神宮でのドラゴンズ戦。7回、死球で出塁した山田哲人の代走として起用された岩田選手は、一塁で牽制球に刺されてしまいました。代走の仕事を果たせないどころか、アウトをひとつ増やしてしまった。しかも次の回には同点に追いつかれ、試合は延長にもつれ込みました。
もっとも、最後は塩見泰隆のサヨナラ2ランでスワローズの勝ち。神宮は大騒ぎでした。ところが、歓喜の輪から外れて、岩田選手は泣いていました。自分の牽制死がよほど悔しかったのでしょう。そんな彼の肩を抱き、慰めていたのが西川遥輝選手でした。
後の報道によれば、このとき西川選手がかけた言葉は「勝ったんやからいいやん」。なんとも優しい先輩です。でも、岩田選手としては「勝ったからよかった」と、すんなり片づけるわけにはいかなかった。勝った試合の後に泣いていた、その姿が強く印象に残っています。
さらに、忘れられない場面があります。