短期連載・さらば、髙津臣吾監督!(3)

奥川恭伸への「えこひいき」とは?
はせがわ 2025.10.23
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髙津臣吾監督の6年間を振り返る「短期連載・さらば、髙津臣吾監督!」、今回は3回目、2021年シーズンから振り返りたいと思います。

野村克也イズムを信奉している髙津監督にとって、ノムさんが常々口にしていた「中心なき組織は機能しない」を意識して、四番とエースの育成に主眼を置いていたのは間違いありません。

白羽の矢が立ったのは、「四番」は村上宗隆選手「エース」はファーム時代から、その素質を目の当たりにしてきた高橋奎二投手、そして自らの手でドラフト会議のくじを引き当てた奥川恭伸投手でした。

小川淳司前監督時代からの育成方針の成果、そして何よりも本人の急激な成長によって、「四番」については、早々にクリアできました。続いては「エース」の育成です。就任3年目となる2021年、髙津監督は奥川投手に本当に大きな期待を寄せていました。

そして、開幕早々となる4月8日、プロ2年目の奥川投手は待望のプロ初勝利を挙げます。今回も、アルファポリス・髙津監督連載から引用しましょう。

――4月8日の対広島東洋カープ戦では、プロ2年目、奥川恭伸投手が待望のプロ初勝利をマークしました。この試合についてはどう振り返りますか?

高津 あの試合はいろいろなことが詰まった試合だったと思いますね。初回にいきなり4失点を喫してしまったのに、味方がすぐに4点を奪って同点に追いつくというのも、なかなかないことだし、1時間近い中断があったのに、粘り強く投げたこともそう。結果的に5失点だったのに勝利投手になったけど、彼にとっては納得のいく内容ではなかったはず。それでも、「プロ初勝利」を手にしたことは、今後につながると思います。

監督は「いろいろなことが詰まった試合」と言いました。ここでは詳細は語られていませんでしたが、今から考えれば、「いろいろなこと」の一つに「今後、大事なところで奥川に任せようというきっかけとなった試合」と僕は考えています。

前半戦が終わった7月のインタビューでは、奥川投手について、「嬉しい誤算」と語っています。その個所を引用しましょう。

――では、嬉しい誤算というのか、「収穫」はいかがですか?

高津 収穫はやっぱり、奥川(恭伸)ですね。当初は中10日の感覚を空けて投げる難しさがありました。彼もとまどっていたと思うけど、ようやく最近では徐々に慣れてきて、自分が思うようなボールを投げる確率が上がってきたと思いますね。ケガをさせないような細心の注意を払う中で、いい経過を残しつつある。後半戦に向けての楽しみが増えた気がします。

――昨年もシーズン最終戦まで一軍に上げなかったり、今季も80球前後で早々に交代したり、細心の注意を払っているのはよく理解できますが、ある意味ではかなりの過保護のような印象も受けます。

高津 確かに過保護って言えば過保護ですね。こんな感じでローテーションを回っている若手投手はなかなかいないですから(笑)。ある意味では特別待遇です。ただ、これは来年以降、中6日できちんと一年間投げられるように、5年後、10年後に真のエースになっているように、そのための段階を踏んでいるんだと思っています。確かにちょっと過保護かもしれないけど、僕は納得して起用しているつもりです。

この年の奥川投手は「中10日ペース」でローテーションを回っていました。2021年は東京オリンピックの関係で、ペナントレースは夏場にいったん中止となり、8月14日からの後半戦開幕となりました。そして、髙津監督は後半戦初戦を奥川投手に託します。しかも、この日の試合が中止となると、そのまま翌15日にスライド登板させてまで、監督は「奥川先発」にこだわりました。再び引用します。

――オリンピックブレイクを経て、8月14日からの後半初戦、対横浜DeNAベイスターズ戦の先発マウンドを奥川恭伸投手に託しました。この日の試合が中止になると、翌15日に、奥川投手にとってはプロ初となるスライド登板を決めました。これほどまでに、プロ2年目の若き右腕にこだわった意図を教えてください

高津 まず、スライド登板の件からお話すると、すごく考えました。彼にとっては初めての経験だし、一回飛ばして、次のジャイアンツ戦に登板してもいいのかなとは思いました。でも、僕は彼のことを「後半戦のキーマンの一人だ」と考えています。「ヤスでいいスタートを切りたい」という思いが強かったので、「よし、スライドさせよう」と決めました。

――後半戦の初戦を奥川投手に託そうと決めたのはいつのことだったのですか?

高津 「後半戦初戦を奥川でいこう」と考えたのは、その一カ月ぐらい前のことでした。それを想定して、エキシビションマッチのローテーションを組みましたから。それまで、ベイスターズ相手に投げたことはなかったんですけど、その後のローテーションを考えたときに、「彼が最初に投げた方が、他の投手も含めてうまく回るから」と考えました。

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