「石川雅規はもう終わり」なのか?

普段は、ギリギリまで執筆作業に取り組んでいるため、試合開始直前に神宮球場に到着する。しかし、石川雅規が登板するときには、少し早めに球場に着くようにしている。「ブルペンでの投球練習を見たい」という狙いもあるし、球場全体の雰囲気、空気感を体感したいという思いもあるからだ。
昨日、球場外周を歩いていたときのことだ。前を歩く相手チームファンのカップルが楽しそうに会話をしているのが見えた。20代前半、学生だろうか? (オレにもあんな時代もあったよな……)と思いつつ、彼らを抜き去ろうとしたときのことだ。男性の声がチラッと聞こえた。彼は得意そうに言った。
「今日は石川だから、大量得点が期待できるぞ!」
それを聞いた僕は、内心で思っていた。
(数時間後、答えが出るさ。そのとき吠え面をかいても知らないからね……)
……しかし、数時間も経たず、わずか30分後に答えが出た。吠え面をかいたのは僕だった。2回8安打6失点で、石川はマウンドを降りた。あの彼の「予言」通りになってしまった。ベンチに戻る石川の姿に注目していたとき、大量得点でいい気分で酔っているサラリーマンが大声で言った。
「石川ももう終わりだな」
残酷な響きだった。しばらくの間、この言葉が頭から離れなかった。僕はスタンドにいたため、石川がどんな表情でその後を過ごしたのか、ベンチ内ではどんな様子だったのかはわからない。
ただ、彼の心中を察することはできた。自分自身へのふがいなさ、腹立たしさ、後を託すことになった中継ぎ陣への申し訳なさ、そしてやはり自分に対する悔しさと怒り……。そんなものがゴチャゴチャに混じり合っていたことだろう。
スタンドにいた僕自身も、ずっと複雑な感情でその後の試合を見守ることになった。その間、ずっと先ほどのサラリーマンの言葉が頭の中でリフレインする。そして僕は、自問自答を繰り返す。
(石川はもう終わりなのか……?)