髙津監督はどうして、送りバントを多用するのか?

髙津監督の発言——理解できること、できないこと
はせがわ 2025-06-27 11:00:04
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こんにちは。交流戦からの小休止を経て、本日からペナントレース再開となります。本日、アルファポリス・「髙津流マネジメント2025」の最新回が公開されました。交流戦全日程を終えて、この間に考えていたこと、どんな思いだったのかを中心に尋ねています。

さて、今回のタイトルは「交流戦、屈辱の最下位——最悪のチーム状況で指揮官はどう戦ったのか」と題されています。詳しくは本文をご覧いただくとして、3ページ目に「なぜ、送りバントを多用するのか、その理由とは?」と題された一節があります。試合を見ていて、「えっ、ここでバント?」とか、「ここ最近好調なのだから、打たせてもいいのでは?」と感じることがしばしばあります。

SNSを見ていても同様の声は多く見られ、ファンの中にもフラストレーションが溜まっていることが伝わってきます。僕自身の考えで言えば、「ここまで負けているのだから、目の前の1点よりも、その選手の将来性に投資してほしい」という思いもあります。

一方で、「これだけ悔しい現実を目の当たりにしているのだから、ガムシャラに勝利を目指してほしい」という思い、そして「そのためには送りバントもやむなし」という思いもあります。これまで、何度か「どうしてバントを多用するのですか?」と、監督に尋ねてきました。

「不動の四番である村上宗隆が欠け、塩見泰隆、長岡秀樹が故障したことで、圧倒的に得点力が落ちている現状だからこそ、とにかく得点圏に走者を進め、目の前の1点を取りにいく」

監督の口からは、そんな言葉が聞かれました。けれども、すでに65試合を消化した今、改めてその思いについて尋ねてみると、僕の想像以上に監督は多弁に、その理由、そして心に秘めていることを話してくれました。印象に残ったのは、こんなセリフでした。

《今のチーム事情を考えると、僕の理想というのは、例えば4点を奪うとしたら、「0、2、0、2」で4点を取るよりも、「1、1、1、1」の4点を狙っています。》

そして、監督はその具体例として、こう言いました。

《バファローズとの試合で小川(泰弘)にスクイズさせた場面がありましたよね。》

6月20日のオリックス・バファローズとの初戦2回裏、2対3と1点差に追いつき、一死二、三塁の場面で、打者の小川投手にスクイズを命じたシーンです。監督インタビューを続けていると、しばしばこんなことが起こります。ある具体的な場面を例に挙げて、その意図の解説が始まるのです。

あの日も僕は神宮球場にいました。あの場面、「ここはスクイズだろう」と確信して見守っていました。注目すべきは「いつサインが出るのか?」ということでした。僕は寺内崇幸3塁コーチ、3塁走者の山田哲人選手、打者の小川選手を凝視します。「何か兆候はないだろうか?」とガン見したものの、このボールで敢行するのかどうかは確信は持てないままでした。

そして、その初球にサインが出ました。投球と同時に、山田選手がスルスルと走り出します。そして小川投手が放った打球はキャッチャーへの小フライとなり、それを若月健矢捕手が見事にキャッチ。本塁寸前のところまで来ていた山田選手もタッチアウトとなってしまいました。

結果はダブルプレー。追加点のチャンスを失ってしまいました。この場面について、「同点を狙ったために、せっかくの逆転のチャンスを逸してしまった」と見ることもできます。一方で、「まだ試合序盤だから、まずは同点に追いつき、なおもチャンスが続くところで逆転を狙うのもアリだ」と考えることもできます。前者を消極的な選択、後者を積極的な決断と判断することもできるかもしれません。

だからこそ、監督が口にした「0、2、0、2」ではなく、「1、1、1、1」という言葉を受けて、改めて「なるほど」と理解しました。スタンドで見ていたために、その時点では岩田幸宏選手の得点圏打率は把握していませんでした。でも、「.059」であれば、確かに確率は低い。ならば、「奉納バント」でおなじみの小川選手のバントを選択することにも根拠はあります。

もちろん、セーフティバントですから、いつものような「奉納スタイル」でのバントとは事情が異なりますが、それでもやはりあの場面ではバントを選択するのも当然のことだと思うし、監督の説明に僕は納得しました。

しかし、その一方で、まったく違う感想を持った場面が、同じ試合でありました。

この試合の8回裏、7対8まで追いついて始まった場面です。この回に「今年の髙津采配」を象徴する印象的なシーンがありました。先頭の伊藤琉偉選手が内野安打で出塁すると、代打の宮本丈選手が送りバント。少々、もったいない気がしましたが、監督の言う「1、1、1、1」を考えると、それが今のスワローズにおける最適解なのかもしれません。

宮本選手が試みたバントの処理を相手投手がミスし、無死一、三塁のチャンスとなります。一塁には代走・並木秀尊選手。打席には岩田選手。何でもできる場面です。ここで岩田選手が初球を犠牲フライ。これで8対8の同点となりました。状況は一死一塁。繰り返します。走者は並木選手です。今度は並木選手の盗塁も考えられる場面です。

そしてここで髙津監督は、続く山野辺翔選手にも送りバントのサインを出しました。二死にしてでも、スコアリングポジションに走者を送りたい。スタンドから見ていた僕は「並木に走らせた上で、続く山野辺、内山の一打に期待したい」と考えていました。

もちろん、盗塁失敗のリスクもありますが、「それでもここは勝負をかける場面だ」「並木で失敗したならあきらめもつく」と考えていたし、「ぜひ盗塁のサインを」と願っていました。

しかし、その一方では「やっぱり、ここではバントのサインが出るのだろう」とも思っていました。山野辺選手はバントを成功したものの、後続が続かずにこの回は同点止まりで終わりました。監督の言う「1、1、1、1」は、毎回走者が出る前提での発言だけれど、なかなかヒットも出ない現状では「数少ないチャンスこそ、一気呵成に攻めてほしい」という思いもあります。

一ファンの個人的な思いとしては、「小川のスクイズはアリで、宮本のバントはもったいないから微妙で、山野辺のバントはナシ」というのが率直な思いです。けれども、「小川にもスクイズ、宮本にも、山野辺にもバント」というのが、髙津監督、嶋基宏ヘッドコーチをはじめとする首脳陣の最適解だということなのでしょう。

この采配に不満を募らせる思いも理解できます。僕は今でも、「あの場面は並木に走らせてほしかった」と思っています。今年のスワローズは、オスナ選手の盗塁に見られるように「行けたら行け」の、いわゆる「グリーンライト(青信号)」がしばしば見られます。

並木選手が代走で起用された場面では、「走るな」のサインが出ていたと思われます。相手投手のクイックタイムはわかりませんが、「盗塁よりもバントの方が二塁進塁の、そしてその後の得点の確率が高い」とベンチが判断したのでしょう。

結果的に得点が入らなかったので、「あのバントは失敗だった」とは言わないけれど、「あのバントには意味がなかった」とは言いたい気持ちになります。

今回の連載において、監督は言っています。

《そこでタイムリーが出ていれば、そんなにバントについて言われることはないと思うんですけど、得点圏打率が非常に悪い。「やっぱり送ってよかった」とならない。》

まさに、そんな思いを噛み締めることになった場面でした。この点について、今後もフラストレーションを溜めていくファンは多いことでしょう。もちろん、僕もそうです。けれども、それが「髙津流」なのだということを理解して観戦すると、また違った見方ができるのではないか? 

そんなことを考えながら、今日から始まるペナントレースに臨みたいと思います。今日も神宮球場に向かいます。明日と明後日はデーゲームです。先週のように、灼熱地獄の中での観戦となるのでしょうか? たとえどんな状況になろうとも、スワローズナインの奮闘に全力でエールを贈り続けるつもりです。

今回も長文となってしまいました。みなさん、よい週末をお過ごしください。我らに勝利を! では、次回配信でお会いしましょう。

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