「《ヤクルトの川端》のまま終わりたい……」
現在発売中の『週刊ベースボール』、ご覧になっていただけましたか? 前回配信でもお伝えしたように、11月19日発売の『週刊ベースボール』は「元気があれば何でもできる フレ!フレ!スワローズ」と題して38ページにわたるスワローズ特集となっています。
前回配信では、奥川恭伸投手インタビューの取材秘話をお伝えしたので、今回は今季限りで現役引退を決めた川端慎吾氏取材時のエピソードをお届けしましょう。
取材現場に現れた川端氏は、薄い黄色いのシャツ姿でした。現役時代とは異なる柔和な表情、そして見慣れぬ私服姿を見て、「あぁ、本当に現役を引退したのだなぁ……」と、しみじみとしてしまいました。
昨年の青木宣親氏、山崎晃大朗氏もそうでしたが、ずっと勝負の世界で闘ってきたプロ野球選手は、ユニフォームを脱いだ瞬間、まさに憑き物が落ちたかのように、一瞬にして表情が穏やかになるようです。川端氏も、まさにそうでした。
今回の取材テーマは、次の3点です。
1.現役引退を決めた時期、そしてきっかけ
2.現役生活を振り返って忘れられない場面
3.新コーチとして、どんな指導者像を目指すのか?
まずは「1」から尋ねると、「まだ野球がやりたいという思いが強かった」と切り出しました。9月上旬に、球団から現役引退、コーチ就任の打診を受け、しばらくの間ずっと悩んでいたといいます。この間、彼は戸田で練習を続け、ファームの試合にも出ていました。
僕もこの頃、戸田に取材に行きました。西川遥輝選手、塩見泰隆選手とともに、内野ノックを受けている姿をハッキリと記憶しています。余談ですが、ノックを受ける川端選手に対して、塩見選手がさかんに声援(ヤジ?)を送っていました。
「ナイスプリンス! 今もプリンス、プリンスいいぞ!」
その姿を見ているだけで、僕は「やっぱり一軍には塩見が必要だ」と思っていました(笑)。
この頃、川端氏は「やっぱり現役を続行しよう」「いや、球団の申し出を受けるべきなのか」と自問自答を繰り返していたといいます。もしも現役を続けるのであれば、それは「スワローズ以外で」ということになります。以下、『週ベ』のインタビューから抜粋します。
——もしも現役続行を選択するなら、NPBの他球団はもちろん、国内独立リーグ、あるいは、韓国や台湾も視野に入っていたのですか?
川端 いいえ。そこまでは考えていなくて、「NPBでダメなら引退しよう」と決めていました。
文字数の都合で、『週ベ』には書いていませんが、僕はこの後、こんな言葉を口にしました。
——そうすると、「ジャイアンツの川端」「タイガースの川端」となる可能性もあったわけですね。
その瞬間、彼は小さくうなずきながら、端正な表情が大きくゆがみました。いや、「ゆがんだ」というよりは、辛そうな、そして悲しそうな表情となりました。そこで、僕は質問を続けます。再び、『週ベ』からの引用です。